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麻酔医の言葉



私はとても「痛がり」です。

いつも痛み止めを持ち歩いています。


30年前、特発性血小板減少性紫斑病のために、ステロイドをのみましたが効かず、しかたなく脾臓摘出手術をうけました。

血小板は主に脾臓で破壊されているので、その破壊工場をとってしまえばいいというやり方です。

(1万以下だった血小板が15万になりました)

脾臓は大人になっていればなくても生きられる臓器だそうです。


手術の前の晩に、病室を訪ずれた麻酔医が、今でも忘れられないやさしい言葉をかけてくれました。


私「明日の手術の後は痛みますか?」と怯えていました。


先生「全然大丈夫ですよ。心配いりません」

  「あなたはひどい痛みの経験があるのですか?」 


私「いくつかあるんです」


先生「どんなことがありましたか?」


私「22才の時、仕事について半年経った頃、仕事場で

     すごく歯が痛み、早退して歯医者さんにいきました。

  歯も痛かったけど、顔全体が腫れて、顔も頭もすごく

      すごく痛かったです。 

  歯医者さんにむかう電車の中で、涙がポロポロでて

       くる位痛かったです。

  歯の根の先が炎症をおこしてしまったのだそうです。

  後日、歯の根元の先をきりとるという歯根端切除

       手術をしました。


先生「それは痛かったでしょうね。

  歯のまわりは特に敏感ですものね。」


私「それから、23才のとき、盲腸炎だったのを普通の

       腹痛と診断され、一晩あたためなさいといわれ、

      湯たんぽをかかえて激痛にひどく苦しんだことが

   ありました。

   手術をした時に盲腸は破裂寸前で、腹膜炎もおこして

   いました。


先生「それも大変だったでしょうね。おなか全体に炎症が

  ひろがってしまったのですね。

  他の痛みもまだありますか?」

   

私「一番の痛みは、25才の時のお産です。

  早期破水したのですが、陣痛微弱なのとおなかの子供 

       が大きくて48時間もかかった難産でした。

 

  「帝王切開にしよう」という判断が遅かったのかも

         しれません。

  もう帝王切開はできず、普通のお産ではでてこない

       位置になってしまって、本当に苦しみました。」


  「先生と看護婦さんが私のおなかの上に乗り、

        おしだそうとした時、私は動物なんだなあと痛みの

        中で思いました」


 先生「立て続けにそういう痛みにあったあなたが、

        痛みに怯えるのは当たり前のことなんですよ。

  脳が痛みをしっかり記憶してしまっているので、

       ほんのちょっとした刺激にも過剰反応するのです。


  あなたが自分を痛がりとか、怖がりとか責める

      ことはないのですよ。


  あなたはきっとやさしい人なんですね。

  痛みを知る人はやさしい人が多いのですよ。


  明日の手術は十分麻酔をするし、その後の傷の痛みも

  ないように十分配慮しますから安心してください。

  私がちゃんと見守りますから」



なんて、こころ強い、やさしい言葉だったことか!

その先生の顔も、言葉も、よ〜く覚えています。


武田鉄也の「贈る言葉」の歌詞に

「人は悲しみが多いほどやさしい気持ちになれるの

だから」というのがあります。


身体も心も悲しみや痛みが多いほどやさしくなれる、

って本当でしょうか?


どの病院でも、大きな手術の前日にはこういう麻酔医が

患者に安心を与えるために病室を訪ねてくれると

いいですね。





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